今週の"ひらめき"視点
失われつつある自然を回復軌道に。日本はネイチャーポジティブ先進国であれ
7月20日、海の日、テレビのニュースは日本生産性本部の「レジャー白書」を引用しつつ、海水浴場からかつての賑わいが消えたことを報じていた。同白書によると2024年の海水浴客はピークの1985年から9割減少したとのことである。猛暑、人手不足、紫外線による健康リスク、レジャーの多様化などが背景にあると説明される。しかし、そもそも海水浴に適した砂浜それ自体も全国的に縮小、減少しつつある。
ダム建設、川砂の大量採取、港湾整備は海岸への砂の自然供給を細らせる。加えて地球温暖化による海面上昇も砂浜の後退に輪を掛ける。国内有数の遠浅海岸で知られる九十九里浜(千葉)も例外ではない。今世紀末には20世紀末に比べ40%~90%の砂浜が失われるとされ、県は人工岬(ヘッドランド)を建設するなど砂の流出対策を講じてきた。一方、海岸線が分断されることによる景観問題や生態系への影響など人工岬による新たな問題も浮上する。失われた自然を人工的に取り戻すことの難しさが浮き彫りになる。
7月14日-15日、熊本市で「グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026」が開催された。ネイチャーポジティブ(自然再興)とは、「2030年までに生物多様性の喪失を止め、2050年までに回復軌道へ反転させる」ことを目指す国際目標である(昆明・モントリオール生物多様性枠組、2022年12月)。主催者によると、会議には世界27ヵ国・地域から行政、企業、研究機関、環境団体などが参加、2日間で2725人が来場、ビジネスおよび金融セクターからの登録者が3分の2を占めたという。
会議では米国などの反動的な動きを踏まえ、行動の緊急性が訴えられた。強調されたのはネイチャーポジティブ経済への移行は長期的視点に立ったイノベーション機会であり、「コストではなく投資である」という点だ。日本は2023年3月、岸田内閣が「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定、これを引き継ぎ石破内閣は2025年の「骨太方針」、「地方創生2.0基本構想」にネイチャーポジティブ実現に向けた地域活動の推進、自然資本投資による企業価値の向上、ネイチャーファインナンスの拡大といった施策を盛り込んだ。現政権が掲げる「戦略17分野」にネイチャーポジティブへの言及はない。とは言え、この問題に政治的分断の種はない。政権、党派を越えた国策として、取り組みを加速いただきたい。
今週の“ひらめき”視点 2026.7.19 - 7.23
代表取締役社長 水越 孝
