今週の"ひらめき"視点
日銀の6月度「短観」、大企業の業況は大幅改善、一方、中小企業は蚊帳の外
7月1日、日銀が6月の全国企業短期経済観測調査を発表、大企業(製造業)の業況判断指数(DI)は5期連続で改善、プラス22となった。これは2018年3月調査以来、8年ぶりの高水準である。DIは業況が良いと回答した企業の割合から悪いと回答した企業の割合を引いた指標で、景気動向判断の指標として日銀が四半期ごとに実施している。
大企業(製造業)の好況要因は堅調なAI、半導体関連需要に加え、先行き不透明な中東情勢を見据えた前倒し需要の高まりにある。また、原材料の高騰に対する価格転嫁が進んだこともプラス要因だ。しかしながら、恩恵は中小企業に及んでいない。大企業のDIが+22であった一方、中堅企業は+17、中小企業は+9に止まる。先行きに対する見通しも同様だ。大企業の+17に対して中堅企業は+9、中小企業は+2と数字は見事に序列関係を表している。
6月25日、全国中小企業団体中央会(全国中央会)が5月度の月次景況調査を公表した。製造業のDIはマイナス37.4、「景況感は引き続き低位で推移」と総括したうえで「目詰まり解消に向けた政府の取り組みへの期待はあるが、石油関連製品の価格が急騰しており価格転嫁には時間を要する」と分析する。「生産活動に必要な全てのものが値上がりしている」「一部資材で出荷調整や発注制限が行われている」「多方面から価格改定の要請が届いており、客先への説明が追いつかない」「今後、価格転嫁を受け入れてくれると思うが受注減が懸念される」など、全国中央会に寄せられた声は深刻だ。
中小企業の価格転嫁率は改善傾向にあるとは言え54.2%に止まる※。大企業の好況感を支える価格転嫁の進展は約半分の中小企業にとって行き場のないコストになっているということだ。下請法による禁止行為も依然高水準だ。令和7年度の禁止行為違反件数は716件(前年比146%)、うち支払いに関する違反(支払遅延、代金減額、買い叩き)は547件(同128%)に達する。今年1月、下請法は規制内容を強化、名称も「取適法」に変更された。製造委託等における取引の健全化は賃上げ原資をサプライチェーン全体に分配するためにも必須である。日本全体が好況の果実を享受するためにもサプライチェーン全域における公正な取引の実現が求められる。
※「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査」、中小企業庁より
今週の“ひらめき”視点 2026.6.28 - 7.2
代表取締役社長 水越 孝
