今週の"ひらめき"視点

ふるさと納税、過度な競争が招く自治体財政の不安定化

6月12日、会計検査院は地方財政計画の検証結果を公表、ふるさと納税が地方団体の歳入歳出総額の見込み額と決算数値との乖離を拡大させていると指摘、総務省に対して影響を検証するよう要請した。ふるさと納税は応援したい自治体に寄付すると寄付額から2000円を引いた額が住民税や所得税から控除される。事業は2008年にスタート、初年度の受入件数5.4万件、寄付額81.4億円、以後、急速に事業規模が拡大、2024年の受入数は5800万件を越え、金額も1兆2727.5億円に達した(総務省)。

“官製通販”とも揶揄される返礼品競争のし烈化はご存じのとおり。総務省は返礼品の上限を寄付額の3割に抑えるなど制度の見直しをはかってきた。2024年度の返礼品総額は3,208億円、還元率は25.2%だ。とは言え、事務費、広報費、送付費用、仲介サイトへの手数料といった諸経費を加えると自治体の財源として残るのは53.6%に過ぎない(総務省)。結果、寄付した人が住む地域から他の地域へふるさと納税を介して税が移動することで自治体の歳入総額は減収となる。

流出超過自治体における減収は当然ながら行政サービスの質を低下させるとともに、行政サービスに要する費用を住民自身が負担する“受益と負担の原則”を揺るがす。加えて、高所得者ほど控除額の上限が高くなる現行制度は、住民税が本来持っている所得再分配機能を低下させる。そもそも国産ブランド牛、タラバガニ、シャインマスカットといった高級食品にふるさと納税ならではの“お得感”を感じて寄付をする世帯の多くは日々の暮らしに追われる層ではないだろう。

さて、筆者の住む世田谷区における住民税流出額は全国5位の134億円、これは耐震対策、トイレの洋式化、猛暑対策といった区立学校の改築・改修予算に匹敵する。流出額がもっとも大きい自治体は横浜市であるが、こちらは流出額の75%が地方交付税で補填される。一方、23区は地方交付税の不交付団体であり補填はない。それだけに区は「地方自治の根幹を破壊する不合理な税制」と手厳しい(令和8年度当初予算概要より)。ふるさと納税の理念、自治体間における一定の競争原理は理解できる。ただ、日本全体が縮小する中での“パイの奪い合い”は根本的な解決とはならない。地方自治とその財源について、あらためて問い直す必要があろう。


今週の“ひらめき”視点 2026.6.14 - 6.18
代表取締役社長 水越 孝