今週の"ひらめき"視点

8月29日は文化財保護法記念日、クールジャパン機構の蹉跌に思う

2013年、第2次安倍政権のもとでスタートした海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)がいよいよ存続の岐路にある。2026年3月末時点における累積投資額は1,588億円、EXIT済案件の損失55億円(投資額599億円)、投資中案件の減損計上258億円(投資額989億円)、これにファンドの運営経費を加えた累積損失は540億円、2022年に策定した“最低達成すべき投資計画”(累積損失426億円)は未達、政府は令和9年度の財政投融資要求を行わない方針を固めた。

失敗の要因は複合的でありクールジャパン機構の蹉跌に今更驚きはない。所管官庁である経産省はあたかもこれを見越したかのごとく2024年には“エンタメ・クリエイティブ産業政策研究会”を新たに立ち上げ、昨年6月には「コンテンツ産業の海外売上高20兆円に向けた5ヵ年アクションプラン」を策定、8月20日、“クールジャパン機構、廃止へ”との報道が流れる中、「エンタメ・クリエイティブ産業戦略2026」を発表した。

政策目標は「2033年に海外売上高20兆円」を達成する、そのために官民の叡智を結集、予算執行の一元化をはかり、大規模・長期・戦略的な官民投資を実現する。また、事業の執行に際しては「不断に政策の効果検証を継続するとともに、責任を持って成果が出るまでやり抜く」との覚悟も表明、クールジャパン機構“敗戦”へのリベンジの色合いも滲む。IP(知財)の価値を最大化、民間の売上3倍・投資3倍、分野やバリューチェーンを横断した予算配分の全体最適化、高付加価値な海外需要の取り込み、クリエイターへの対価還元、、、散りばめられた威勢の良いポジティブワードそれ自体に異論はない。

とは言え、映画監督の是枝裕和氏が指摘したとおり※1、そもそも創作の動機はビジネスとしての「勝ち筋」だけではないし、世界的にも見劣りする文化・芸術関連予算とのバランスの悪さは否めない。政府予算に占める文化支出額の比率は0.1%、フランスは同0.9%、韓国は同1.2%※2である。数字は2020年のものであるが趨勢は変わらない※3。文化財、芸術、芸能の保全、保護、継承のための財政基盤は極めて脆弱だ。経産省の言葉どおり“創造力で稼ぐ国”を目指すのであれば省庁の枠を越えた次元において“持続可能な文化のバリューチェーン”戦略こそが求められる。それにつけてもまずはクールジャパン機構の総括である。

※1:2026年4月2日、第2回コンテンツ産業官民協議会、資料10より
※2:令和2年度「文化行政調査研究」諸外国における文化政策等の比較調査研究事業より
※3:2026年度の文化支出(予算)は文化庁予算1,073億円に国際観光旅客税から文化庁に配分される224億円の計1,297億円、政府予算(一般会計)に対する文化支出の割合は0.1%


今週の“ひらめき”視点 2026.8.23 - 8.27
代表取締役社長 水越 孝