今週の"ひらめき"視点

浜岡原発データ不正、業界は中部電力の構造問題を“他山の石”に

9月14日、中部電力は浜岡原子力発電所におけるデータ不正問題を受け、林欣吾社長、勝野哲会長の辞任と浜岡原発3、4号機の再稼働審査の取り下げを発表した。耐震設計の前提となる基準地震動の値を意図的に過小評価する不正行為は2012年頃から始まった。2019年と2021年、2回の内部通報は不発、2025年2月、原子力規制委員会への外部通報をもってようやく問題が顕在化する。それでも不正は止まず、一方、1、2号機の廃炉作業においても報告書データの書き換えや費用請求における不正が露見する。

公表された特別調査委員会の調査報告書は、経営陣による不正への直接的な関与はなかったものの再稼働審査の遅れに対する“叱責”が現場に対して大きな圧力になったこと、内部通報制度がまったく機能しなかったことなど、経営および組織としてのガバナンスの欠落を指摘した。そのうえで、「本事案に通底する原因として極めて特異な考え方が存在していた」と結論づけた。

調査委員会が指摘する“特異な考え方”とは、国の原子力行政、再稼働の必要性等を背景に自分たちの行為に問題はないと認識する者が少なからず存在していたことを指す。何らかの事情ゆえに止むに止まれず不正を働くのではない。独自の合理性と独自の正義感にもとづき「自分たちは正しいことをしている」との信念をもって不正を実行していること、そして、それらの者が一定のグループや集団を構成しており、そうした集団が社内の様々なところに存在している可能性があることを“憂慮すべき事態”と警告する。

これこそ問題の核心であり、はたして中部電力に固有のものではないだろう。関電は美浜原発1号機の燃料棒折損事故(1973年)を4年間隠ぺいした。北陸電力志賀原発1号機の臨界事故が発覚したのは発生から8年後の2007年だ。1980年代から続いていた東京電力による福島第一、福島第二、柏崎刈羽原発の原子炉設備のひび割れ等の隠蔽が露呈したのは2002年、米GE社の内部告発による。同社は福島第一事故後も柏崎刈羽原発におけるテロ対策上の違反等により運転禁止命令を受けている。各社はそれぞれ不正防止策を講じ、安全最優先を宣言している。とは言え、高度な専門知識と複雑で巨大な技術の壁の内側のどこかに“特異な考え方”は燻っていないか。油断、驕り、閉鎖性の行き着く先は東海村臨界事故(1999年)であり、福島第一事故(2011年)である。

 


今週の“ひらめき”視点 2026.9.13 - 9.17
代表取締役社長 水越 孝